K’s blog

日系SIer → 外資戦略コンサル → 日系電機メーカー → ロボットメーカー、というちょっと転職回数多めの筆者が、雑学・ビジネス・政治経済・趣味のマンガについて語るブログです。

生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像



海が生命の母、という通説を覆す最新研究。なるほど感、へ〜言われてみれば確かに感、の高い良書。

 

生命は、地球環境の変化の中で、必然的に自然選択によって誕生した。

地球と同様の生命の発生には、地球と類似の惑星である(恒星の種類、恒星との距離、大きさ、構成物質など)だけでなく、その環境変遷・イベントのタイミングなども同様である必要がある。従って、火星や銀河系内に、地球同様の生物が存在する可能性はほぼゼロ。

有機物は、冷えて海ができた状態のところに、たまたま小惑星帯とぶつかって起きた、大量隕石群の衝突による化学反応があって生成された。
海が出来ただけでも、隕石群が落ちただけでも、隕石群が落ちた後に海が出来ても、有機物は生まれない。

隕石や彗星からアミノ酸がもたらされたという説もあるが、量も少なく、落下中に燃え尽きることから否定。

生物の有機分子が全て水溶性かつ粘土鉱物と親和的なのは、それ以外の条件だと、海面に浮上して当時の酸化大気と日光で分解されてしまったから。(分子の自然選択)

有機分子が高分子化(タンパク質もどき化)したのは、海底に堆積し、地下深くで圧密した結果。
その後、地中の有機高分子が海底プレートに運ばれて集積し、小胞化したものだけが地中の熱水に分解されずに残る(とある条件下なら無機物でも小胞化するケース有り)。小胞同士が熱水に運ばれて合体・変化。他者を取り込んで成長=代謝出来たものが生き残り、さらに小胞内でRNA/DNAによる自己複製・増殖出来たものが、生き残った。ここ迄は地中で可能な話であって、海が生物の起源ではない。(海中だと高分子よりも加水分解が進むし、分散して集積もしない。)

その後、マントル対流が活性化して地球磁場が強まり、宇宙放射線の影響が少なくなった段階で、シアノバクテリアが浅い海に進出して増殖・光合成を開始。

生物の根本の祖先は一種類ではなく、複数バクテリア。親子の遺伝による進化ではなく、合体・融合による進化。一つの細胞に複数のバクテリアが共生。細胞内の小器官として進化。細胞内の小器官であるミトコンドリア葉緑体も元は異なるバクテリア(生物)で、宿主とは異なるDNAを持つ。
光合成をするバクテリアを取り込んだのが植物の祖先で、運動するスピロヘータを取り込んだのが動物の祖先。だから系統樹の一番根っこはひとつではなく複数に分岐。全ての生物の唯一の祖先は存在しない。

 

でも、地球冷却によるエントロピー低減が、生命を含む地球の秩序化・組織化の理由、っていう点だけは納得いかなかったな。
太陽光のインプットとかもあるから、地球って枠の中だけでエントロピーを論じてることに疑問。